我が名は座頭市

我が名は座頭市老いという名の男が、

やってきた。 いつの間にか 隣に座っていた。

「おぬし 何者だ」 答えず ただ 気配だけがした。 そいつは赤代官。

夕方になると 目をさらに滲ませ、

漢字をかすめとり、

膝に 肘に ぬるい痛みを置いていく。

息をするたび老いてゆく。

ため息が混じる。

まったく たちの悪い ヤカラめ。

斬ろうとした。

刀に手をかけた。

足腰がヨレヨレに。

立ち上がるだけで 息が切れた。

そしたらそいつが言うた。

「老いよ おぬし 今日も歩いてきたのう」

……なんだと。 夕暮れになるたび

暗さ怯え膝が悲鳴をあげ肘も真似して、

身体に子泣きじじいが憑依する、

持続力もボロボロになりながら。

それでも

ため息つきながら 歩いてきた、あきらめず。

若いころも そうじゃったな。 黙って聴いた。

そいつは続けた。

わしはな 奪いにきたんじゃない。

一緒に 持ちきれんものを 降ろしにきたんじゃ。 腰を下ろし、

刀を 鞘に収めた。

老いという男の隣で、

ため息を ひとつ 夕風に預けた。

(ここまで)

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盲目の剣豪・座頭市が老いと静かに向き合う、優しくて心に染みる短編です。 全文はこちら

https://note.com/lively_liger4115/n/nd735f1141f6e